業界研究

IT・情報サービス(SIer)業界とは

SIerは、企業や自治体の業務システムを企画から運用まで請け負う仕事です。人月商売と呼ばれる稼ぎ方、独立系・メーカー系という会社の系統、生成AIによる変化、主な職種を解説します。

公開日 / 最終更新日

運営 株式会社Hal / 編集 PREJOIN 編集部 / 監修 岩本 晃典(株式会社Hal 代表取締役)

SEが顧客の要望を聞き取りながらタブレットにメモしている様子

業界の解説

IT・情報サービス(SIer)業界とは

IT・情報サービス業界は、企業や自治体が使う業務システムを、企画から設計、開発、運用まで請け負う仕事です。銀行の勘定系システム、小売の在庫管理、製造業の生産管理など、扱うシステムは業種ごとに姿を変えますが、お客様の業務をシステムという形に落とし込むという役割は共通しています。この業界を指してよく使われる「SIer(エスアイヤー)」という呼び方は、システムインテグレーション(system integration)を行う会社という意味です。

エンジニアたちが並んだデスクでノートパソコンに向かって作業している様子

自分たちで何を作るかを決めて売るメーカーとは違い、SIerの仕事は基本的に依頼を受けて始まります。お客様の業務のどこに課題があるかを聞き取り、それをシステムの機能や画面の形に翻訳していく。この翻訳の精度が、プロジェクトの成否を大きく左右します。パソコンに向かってコードを書き続ける仕事というイメージを持たれやすい業界ですが、実際にはお客様先での打ち合わせや、社内の関係部署との調整に多くの時間が使われます。

どうやって稼いでいるか(ビジネスモデル)

伝統的な稼ぎ方は、システム開発を請け負い、投じた人数と期間に応じて対価を得る受託開発です。エンジニアの稼働時間が売上に直結するため、「人月商売」とも呼ばれます。

受託開発の流れ
  1. 要件定義:お客様の要望を聞き取る
  2. 設計
  3. 開発
  4. テスト
  5. 納品
  6. 保守・運用:継続的な収益にもつながる
お客様の要望を要件に落とし込み、開発・検証を経て納品と運用へつなげる流れです。

受託開発は、契約した金額の中で作業を終わらせる必要があるため、見積もりの精度が利益を左右します。想定より作業が膨らめば、その分の負担は請け負った会社にのしかかります。だからこそ、最初の要件定義でお客様の要望を正確につかんでおくことが、後工程の利益を守ることにも直結します。近年は、納品して終わりではなく、保守・運用やクラウドサービスの利用料など、継続的に収益が入るストック型のビジネスへの比重も増えています。

主なプレーヤーと業界の構造

1つのプロジェクトには、元請けから何次かの下請けまで、複数の会社が関わる多重下請けの構造があります。

多重下請けの構造
  1. 発注者:業務の課題、予算とスケジュール
  2. 元請けSIer:要件定義、プロジェクト管理、品質保証
  3. 協力会社(下請け):設計、開発、テスト
1つのプロジェクトに、元請けから協力会社まで複数の会社が関わります。

SIerは、生い立ちによっていくつかの系統に分かれます。独立系と呼ばれる会社は、特定の親会社を持たず幅広い業種のシステムを手がけます。メーカー系と呼ばれる会社は、大手電機メーカーの情報システム部門が独立してできた会社で、親会社の製品や技術との親和性を強みにします。電機メーカー本体は、ITサービス以外にも半導体や重電、通信インフラといった大規模な事業を抱えているため、会社全体の売上をそのままITサービス業界のランキングに並べると、実態と離れた比較になってしまいます。

いま起きている変化

長年使われてきた古いシステム(レガシーシステム)を刷新する需要は根強く続いています。

サーバーとクラウドを象徴する小物が並んでいる様子

生成AIの登場は、この業界の仕事のやり方を変えつつあります。プログラムのコードを書く作業の一部がAIによって速くなる一方で、お客様の業務を正しく理解し、要件として定義する力の重要性はむしろ増しています。技術者を客先に常駐させて働かせる形態(SES)から、自社内で開発する体制への転換を進める会社も増えていて、働き方そのものが業界内で議論されるテーマになっています。クラウドサービスの普及も、業界の姿を変えている要因の1つです。自社でサーバーを持たずにクラウド上でシステムを構築するのが当たり前になったことで、必要とされる技術の中身も年々更新されています。

この業界の主な職種

お客様の業務を聞き取り、システムの要件として整理する上流工程を担うのがSE(システムエンジニア)です。

SIerの主な職種
上流から実装まで、複数の職種がバトンをつなぎながらシステムを作ります。

要件がまとまった後は、それをプログラムとして実装する開発エンジニアがバトンを引き継ぎ、プロジェクト全体の進行や予算、品質を管理するプロジェクトマネージャーが全体を統括します。システム導入の前段階で業務そのものの課題を整理するITコンサルタントという職種もあり、SIerとコンサルティングファームの双方に、似た役割を持つ人たちがいます。

売上ランキング

売上高ランキング

指標: 売上高 ・ 基準: 調査時点(2026-09-28)で東証に上場している、独立系・シンクタンク系ITサービス・SIer企業の、直近通期の連結売上高(または売上収益)。富士通・日立製作所・NECなど電機メーカー本体は、半導体・重電・通信インフラといったIT以外の大規模事業を抱えており、会社全体の売上をそのまま並べると基準が混ざるため、今回のランキングでは対象外とした。伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、NTTデータグループは、2023〜2026年に完全子会社化に伴い上場廃止となったため対象外とした。 ・ 調査日 2026-09-28

順位社名金額決算期注記・出典
1大塚商会
1兆3,227億円
2025年12月期出典
2野村総合研究所
8,147億円
2026年3月期出典
3TIS
5,964億円
2026年3月期出典
4BIPROGY
4,336億円
2026年3月期出典
5日鉄ソリューションズ
3,813億円
2026年3月期出典
6インターネットイニシアティブ
3,453億円
2026年3月期出典
7電通総研
1,648億円
2025年12月期出典
8DTS
1,352億円
2026年3月期出典
9オービック
1,352億円
2026年3月期出典
10SHIFT
1,298億円
2025年8月期出典

決算期がそろっていません(大塚商会・電通総研は12月期、SHIFTは8月期、そのほかは3月期)。伊藤忠テクノソリューションズ(2023年12月1日上場廃止)、SCSK(2026年3月12日上場廃止)、NTTデータグループ(2025年9月26日上場廃止)は、いずれも親会社による完全子会社化で非上場になったため対象外としました。TKC、JBCCホールディングスは上場を継続していますが、直近通期の売上高が上位10社には届きませんでした。順位は上場企業間の比較であり、非上場企業を含めた業界全体の序列ではありません。三菱総合研究所(2025年9月期)とNSD(2026年3月期)は、僅差で上位10社に届きませんでした。インターネットイニシアティブは通信業界のランキングにも載せています。

各社の決算資料を基に編集部が作成。決算期が異なる企業を含みます。

就活対策

この業界で求められる力

SIerの仕事で欠かせないのは、相手の話を正確に聞き取り、構造化して整理する力です。お客様は必ずしもシステムの専門家ではないので、曖昧な要望の奥にある本当の課題を掘り下げ、実現可能な形に翻訳する力が求められます。

SIerの選考で意識したい力
  • 要件を聞き取る力曖昧な要望の奥にある本当の課題を掘り下げる。
  • 調整力お客様と開発チーム、協力会社の間に立つ。
  • 学び続ける姿勢数年で変わる技術を自分で調べて理解する。
  • 几帳面さ決めたことを記録に残し、後工程に伝える。
相手の話を構造化して聞き取る力と、学び続ける姿勢が問われます。

複数の関係者(お客様、開発チーム、協力会社)の間に立って、期限や仕様のズレを調整する力も重要です。技術そのものへの関心はもちろん役立ちますが、それ以上に、文書を書いて記録に残す地道な作業を厭わない姿勢や、決めるべきことを先延ばしにしない責任感が、日々の仕事の質を左右します。新しい技術を学び続ける姿勢も欠かせません。数年前の常識が通用しなくなることも珍しくない業界なので、わからないことをそのままにせず、自分で調べて理解しようとする習慣が、長く働くうえでの土台になります。

選考で見られやすいポイント

選考では、論理的に物事を説明できるかどうかがよく見られます。複雑な状況を整理し、順序立てて話す力は、実際の仕事でお客様や開発チームに説明する場面でそのまま必要になる力だからです。

プログラミングの経験や情報系の知識は、あれば評価される材料になりますが、必須とされないことも多い業界です。それよりも、初めて触れる分野を理解しようとする意欲や、地道な検証作業を最後までやり切る粘り強さのほうが重視される傾向があります。なぜSIerなのか、開発なのか上流なのか、自分の適性をどう考えているかを言葉にできるように準備しておくとよいでしょう。

チームで何かを作り上げた経験があるかどうかも、よく聞かれるポイントです。1人で完結させた成果よりも、役割の違うメンバーと協力しながら物事を進めた経験のほうが、実際の開発現場に近いイメージとして評価されやすい傾向があります。

業界研究で押さえたい問い

  • 独立系・メーカー系・金融系など、会社の成り立ちによる違いは何か

  • 受託開発が中心か、自社サービスやパッケージ製品を持っているか

  • 客先常駐が中心の働き方か、自社内で完結する開発が中心か

  • 生成AIの活用にどのくらい前向きに取り組んでいるか

  • 得意とする業種(金融・製造・流通など)はどこか、自分の関心と重なるか

この業界のインターンシップ

IT業界のインターンは、システム開発の流れを体験するプログラムが多い業界です。SIerでは、お客様役の社員から要望を聞き取って要件をまとめる要件定義型のグループワークと、実際に手を動かして小さなシステムを作る開発体験型の2つがよく見られます。どちらに重心を置くかは会社やコースによって違い、文系・理系を問わず参加できるものもあれば、プログラミング経験を前提にするものもあります。日程や選考の有無は会社と年度によって変わるので、応募前に各社の採用ページで最新の募集要項を確認してください。

よくあるプログラムの形

  • 要件定義型: 架空のお客様の業務課題を聞き取り、必要な機能や画面をチームで整理して提案する

  • 開発体験型: 簡単なアプリや業務システムを、設計からテストまで短い期間で作ってみる

  • プロジェクト疑似体験: 途中で要望が変わるなどの状況を与えられ、スケジュールや優先順位を組み直す

参加前に準備しておくこと

要件定義型に参加するなら、身近な業務を1つ選び、その流れを箇条書きや図で書き出す練習をしておくと役に立ちます。たとえばアルバイト先の発注や、サークルの出欠管理などで十分です。誰が、いつ、何を入力して、何が困っているのか。これを整理する作業は、ワークの中でそのまま使います。開発体験型に参加するなら、プログラミングの入門教材を1つ通して触っておくだけでも、当日の戸惑いがかなり減ります。完璧に書ける必要はありません。わからない箇所を自分で調べて解決した経験があると、それ自体がワークの中で活きます。あわせて、志望する会社が独立系かメーカー系か、どの業種のお客様が多いかを調べておくと、座談会で具体的な質問ができます。

参加できなかったときの業界理解の深め方

参加できなかった場合でも、業界理解を深める方法はあります。1つ目は、各社の採用ページやIR資料に載っている導入事例を読むことです。どんな業種のお客様の、どんな課題をシステムで解決したのかを追うと、会社ごとの得意分野が見えてきます。2つ目は、自分が使っている銀行アプリや、ネット通販の注文画面の裏側で、どんなシステムが動いていそうかを想像してみることです。3つ目は、情報処理技術者試験のITパスポートのような入門的な資格の学習を通じて、システム開発の用語や流れを一通り知っておくことです。企業の仕事をもとにしたワークにオンラインで取り組めるPREJOIN のワークのように、選考なしで要望の聞き取りや整理を体験できる場を使う方法もあります。

インターンの探し方や応募の進め方そのものは、インターンの探し方をまとめた記事で詳しく解説しています。

体験を ES・面接で語るには

職業体験で経験した「相手の要望を聞き取り、要件として整理する」という作業は、そのままSIerの仕事の中心部分と重なります。ES や面接では、聞き取った情報をどう整理し、どこで優先順位をつけたかという過程を具体的に話すと、実務のイメージが伝わりやすくなります。

途中で要望が変わったり、後から新しい条件が追加されたりした経験があれば、それも良い材料です。予定外の変化にどう対応し、関係者とどう合意を取り直したか。この対応力を語れると、変化の多い開発現場への適性が伝わります。

聞き取った内容を文書や図に整理した経験があれば、その工夫も話す価値があります。頭の中で理解しているだけでなく、他の人にも伝わる形に残せるかどうかは、実際の仕事でそのまま問われる力だからです。完璧な整理でなくてもかまいません。試行錯誤しながら分かりやすさを追求した過程こそが、伝えるべき中身になります。

出典・この記事について

  1. IPA 情報処理推進機構 ITパスポート試験
  2. 大塚商会 IR情報
  3. 野村総合研究所 IR
  4. TIS IR情報
  5. BIPROGY 投資家情報
  6. 日鉄ソリューションズ IR情報
  7. インターネットイニシアティブ IR情報
  8. 電通総研 IR情報
  9. DTS 有価証券報告書(2026年3月期)
  10. オービック IR情報
  11. SHIFT IR情報

本記事は、PREJOIN 編集部(株式会社Hal)が、各社の有価証券報告書・決算資料・公式サイトなどの公開情報と公的統計をもとに作成しています。数値は作成時点のもので、最新の情報は各出典をご確認ください。

内容の誤りや古くなった情報にお気づきの場合は、info@hal-corporation.com までお知らせください。

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